10枚!

衝撃を受けた10枚のアルバム。

というのを音楽仲間がブログに書いていて、コメントをしたりしていたら、なんとなくこちらの方に回ってきたので考えてみた。

一枚一枚よい音楽を紹介していくのは大好きだが、10枚を選ぶとなるとこれは難しい。

そもそも「衝撃」とはどんな気持ち??というところから始まるのだ。

今まで歌謡曲しか知らないところに、初めてジャズを聞いた、とか、初めてアフリカのなんとか族の音楽を聞いた、という時のように、少年の頃に新しいジャンルの音楽を聴いて、なんじゃこりゃ!どういうふうに聴いたらいいの!?という感情は確かに衝撃であった。

しかし今となっては、さすがにその種の衝撃はやってこない。

なので、そういった気持ちも含め、影響を受けた、気持ちを救われた、とにかくそればっかり聴いた、などなど、いろいろな意味で思い出に残っているアルバムを選んでみたい。

なんだかエラソーだが、どれも愛すべきいい音楽なので、もしご存じないものがあれば聴いてみてほしいと思う。


1 シベリウス 交響曲第2番
https://www.youtube.com/watch?v=y4UJqOQ0x4s
子供の頃、父親と一緒によく聴いた。僕の音楽の原体験。
第4楽章のクライマックスに行くまで、ハラハラとしながら聴いたものだった。

クラシック好きの人に話すと「ああ、あれね。」と鼻で笑われてしまうぐらい、その世界では有名な曲だ。記憶にある限り、僕の音楽に対する「感動」はここから始まったと思う。


2 Duke Ellington & John Coltrane
https://www.youtube.com/watch?v=m2agjcTUgF8
中学生ぐらいのころ、家の捨ててしまうようなガラクタの中に一本のタイトルのないテープがあった。何が入ってるのかな?と何気なくかけてみたところ、いかにも不思議な音楽が流れてきた。
「ジャズ」という言葉すら知らなかった僕は、そもそもこのテープの中に入っているモノは「音楽」なのかしら?と思いながら、なぜか何度も何度も聴いた。
ちょうどその時、ごろごろしながら読んでいた漫画「銀河鉄道999」の世界観と妙にマッチしたのを覚えている。

それがこの有名なアルバムだと知ったのは、成人してからだ。
ジャズの名盤ということで、図書館から借りてきてかけてみると、あの時の音が流れてきたからびっくりした。その出会い直しはまさに「衝撃」だった。
テープは多分兄のものだったのかな。

「ウェザーリポート」のファーストアルバムも衝撃的なジャズ(と言っていいのかな?)との出会いだった。一体何がどうなっているのか、どのように聴いたらいいのかすらわからなくて、ただただその浮遊感に惹き込まれたのを覚えている。
https://www.youtube.com/watch?v=4b743pjOGUA


3 Simon&Garfunkel / Greatest Hits
https://www.youtube.com/watch?v=4Ccgk8PXz64
アコースティックギターを手にして初めて挑戦した曲が「スカボロ・フェアー」だった。イントロは指2本でできてしまうので、実は傍で見ているよりも意外に難易度は高くないのだ。もちろん上手に弾いて歌えるようになるまでには時間がかかった。
ジャカ弾きから入って「F」で挫折するよりずっと近道だと思う。S&Gはあんまり「F」のフォームは使わないしね。
「Greatest Hits」としたが僕が最初に聴いていたのは、廉価な企画もののベスト盤だった。ジャケット画像は見つからなかったので、違うものです。

押しなべて、マイナー調で幻想的な曲が僕は好きだ。フォークロック方面では「クロスビー・スティルス&ナッシュ」も上げたいけど、それはまた今度。


4 Pearl Jam / Live on Two Legs
https://www.youtube.com/watch?v=ZgaG46DEY84&t=96s
ギター小僧は大体ロック好きだ。
とにかくひたすら聴いたLed Zeppelinとどちらか迷ったが、ハードなロック部門はこのアルバムにしようかと思う。
10代の頃、失恋したりしてモヤモヤしていた気持ちを受け止めてくれた。グランジとかオルタナティブとか、僕たちの頃流行ったジャンルだった。90年代の若者の鬱屈した心のカタルシスだったのだと思う。
今でも辛くなった時に引っ張り出して聴いたりする。青春の思い出に感謝である。


5 Michael Hedges / Live on the Double Planet
https://www.youtube.com/watch?v=YaIN13aDbCc
この辺からちょっと普通でなくなってくるのだが…。
変則チューニングを駆使し、アコースティックギターを叩いてハーモニクスを出したり、ライトハンドタッピングと複雑な左手の技巧で、ギター一本で厚みのあるサウンドを作る奏法の開祖である。

視覚的にも衝撃であり、楽曲的な美しさにも惚れ込んで何度も聴いてしまった。

日本では、押○コータローさんなどがこの奏法の後を継いでいる。と言っていいのかな?
でもマイケル・ヘッジスのすごいところは、その奏法よりも、ヒンドゥーやチベット仏教などの思想を軸にした、曲の完成度やその雰囲気にあるだろう。

事故で夭逝してしまい残念だ。

僕はこの奏法、練習してわりとできるようになったんだけど、どうにも巷で流行り始めちゃって、路上のフォークシンガーまでギターを叩いていたので、なんだかバカバカしくなってやめてしまった。

自分は天の邪鬼だなあ、と思ったけど、マイケルは異端でありながら正統派であることの大切さも同時に教えてくれる。


6 Bob Marley / Legend
https://www.youtube.com/watch?v=imfiY8ZVZ0g
北海道に友人と旅行した時にヒッピー祭りに紛れ込んで、そこで初めてレゲエというものを知った。音楽だけじゃなくメッセージもかっこいいと思い、ハマっていった音楽である。
軍事政権と音楽で戦うなんていうことは、思春期を脱したばかりの自分にとってショッキングなことだった。

同じように、自宅にバリケードをはり、「カラクタ共和国」という独自の国家を打ち立て、ナイジェリアの軍事政権と戦った闘士、フェラ・クティも、同等にというかそれ以上に尊敬するミュージシャンである。
この曲クソカッコいいぞ!
https://www.youtube.com/watch?v=URRtk4OQCY4

ブラジル音楽も、ほんの数十年前までは政治との戦いであった。「トロピカリア」などもその一つだ。今でも現役の有名なミュージシャンだって危険分子として投獄されたり、亡命を余儀なくされたりしている。ブラジル音楽の歌詞のないスキャットに力があるのは、本来歌詞があるものを検閲のため歌えず、その思いを込めて、メロディだけで歌った歴史を受け継いでいるからに他ならないと思う。

ま、やはり、ちょこちょこ番外編も挟んでしまい、結局10枚選べない感満載であるが、もうちょっとお付き合いいただきたい。


7 下田逸郎 / 下田逸郎物語
https://www.youtube.com/watch?v=bORjfhYtuFE
兄が、ある時突然、「この人知ってる?」と言って聞かせてくれた。
なんという歌詞、なんという存在感。「歌」とはなんぞや、と繁く考えさせられた。

恥ずかしながらいろいろあって、このアルバムしか聞けない時期があった。その時ずいぶん救われた音楽だ。

「逃げるっていいことだよね。逃げるってことはどこかに向かわないといけないってことだもんね。逃げてはいけないって言ったって、自分がどこにいるかもわからないのにね…」というようなMCにも何度心を楽にしてもらったか。


8 Miles Davis / Water Babies
https://www.youtube.com/watch?v=mNbBaBOgUfc
ハマったといえばこの人が一番ハマったかもしれない。エレクトリック・マイルスばかり聴いていた時期があった。
言わずとしれたジャズの帝王である。マイルスを帝王というにはもちろん賛否両論あるだろう。

うるさ型のジャズ喫茶のマスターなどと話すときには、マイルスが好きという話は避けたほうが無難だ。
グラント・グリーンあたりが好きと言っておけば大体気に入られるのだろうが(笑)

アルバムはたくさんありすぎて、何を上げるか迷ったが、個人的にこのWater Babiesが結構好きだった。有名ではない、狭間の実験的な作品だと思う。

一人暮らしをしていた時、風呂上がりにこのアルバムをかけて、本を読む、というのが日課になっていたので思い出の1枚になった。

全然違うのも聴いてほしい。
https://www.youtube.com/watch?v=h4X3rAg6lhY


9 Milton Nascimento / Music for Sunday Lovers
https://www.youtube.com/watch?v=CNovnrkM8XU
とにかくブラジル音楽が好きでたまらない。恐れ多くも自分が曲を作ったりする時には、どうしても近づいていってしまうジャンルである。

エグベルト・ジスモンチとの出会いもショッキングだったし、ギンガのギターは、とにかく美しく永遠の目標である。どちらも聴かれると恥ずかしいぐらい影響を受けまくっているのだ。

でも最初の出会いは、こちらのミルトンさんであった。
「ブラジルの声」とまで評される圧倒的な存在感。

ところが決して技巧に偏らない、いやショービジネス的な技巧には…というべきか。
「うまい」ということは、どこまでいっても技術そのものではなく、男女の愛であったり、ブルースであったり、社会に対する思いであったり、溢れ出るものをいかにそのまま人と共有できるかということだ。

そんなことを、ブラジル音楽は考えさせてくれる。


10 Keith Jarret / The köln concert
はあはあ、いよいよ10枚目です。
最後まで読んでくれた方、ほんとにありがとう。

天才、という言葉はこういう人のためにあるので、おいそれと使ってはいけない。

無人島に一枚持っていくとしたら…、と聞かれたら、キース・ジャレットの「The Melody at Night with You」というアルバムを選びたい。
彼が精神の病を患って、そこから立ち直りかけた時に、支えてくれた奥さんにプレゼントとして個人的に録音したもの。
世に出すつもりはまるでなかったが、レーベルECMの社長が聴き、どうしてもと頼み込んで音源化されたものだ。

優しく力強い音に、何度泣いたかわからない。

でも「衝撃」という意味ではこちらの即興コンサートシリーズの、ケルン・コンサートを上げたい。

完全即興ですよ!?同じ音楽というものを少しでもかじった経験があれば、この衝撃たるやいかばかりか、ということをお察しいただきたい。いただけない方とは、音楽の話などしたくありませ~ん。

どちらのアルバムもよい動画がなかったので、キース・ジャレットの演奏はこの曲で。
しかも東京で紡がれたメロディだ。

Over the Rainbow
https://www.youtube.com/watch?v=MTm_RUp-OHU

長文、失礼いたしました。

さて、バトンを渡してくれた音楽仲間ノレンニゥー・デ・オッシのやっさん、こんなもんでいかがでしょう。

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