隣人

うちの向かいには、おじさんが住んでいる。

これが恐ろしいほどに几帳面なおじさんである。

こんなに几帳面な人を、僕は今までの人生で見たことがない。

庭の草は蟻一匹隠れられないほどに丁寧に取り、砂利は今に枯山水のように筋目でも入れようかというほどに真っ平らである。

洗濯物のTシャツは、全くしわが出来ないように四方からひもを付けた洗濯バサミでつまんで、固定してある。

何と言う丁寧、何と言う几帳面。潔癖、綿密、精緻。

あまりに几帳面なので、冷徹かと思いきや、とてもいい人で、僕の妻や子供にもやさしい声をかけてくれる。

今日、ゴミ捨て場に出してあった新聞の束を見て僕はぶっ飛んだ。


まさに芸術である。

数分後には、トラックに放り込まれてしまうというのに。


このようにしてもらって新聞紙も喜んでいるだろう。


僕は反省するのである。

今まで、今日はフリーライブだから、お客さんが少ないからといっていい加減なフレーズを投げつけたり、練習不足のまま、構成や内容をその場任せにしたりしていなかっただろうか。

していないつもりだが、無意識にはきっとそうなっていたに違いない。


おじさんの生活は、いろいろと考えさせてくれるのであった。

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