カエルの歌

窓を開けると、涼しい風が入り込んできて、田んぼのカエルたちは、ケロリケロリと鳴いている。

唐突に誰かが鳴き出したかと思えば、大合唱になり、なにやらこちらにはわからないキッカケで一斉にしーんとなってしまう。

ふと会話が止まってシーンとなってしまうことを、「天使が通った」などと言うらしいが、カエルの世界にも天使はいるのだろうか。


何気なくTVをつけていると、タレントの武井壮が、どうやって十種競技で活躍するほどの運動神経を身に付けたか、という話をしていた。

とてもためになる話だった。

多くの人は自分の体を思い通りに動かしているように思っているけれど、実際はそうじゃない。

例えば、「水平に」両腕を広げ、それを鏡で見る。

自分は水平だと思い込んでいても、実際はちょっと上がっていたり下がっていたりするのに気がついていない。

体の動きの中にはそういったことがたくさんあり、そういう思い込みの上にいくら練習を重ねても効果が薄い、ということだった。

普通の人は、それに気が付かずに闇雲に反復練習を重ねるだけになってしまう。

という、ここのところがとても印象に残った。


なるほど、ミュージシャンにも同じことが言えるよな、と思い、自分がどのくらい歌の音程を正確にとれているかという実験をしてみた。

楽器で半音ずつ音を出しながら、チューナーを口の前に持ってきて計測してみる。

おお、意外と音が合っているように思いながら声を出していても、チューナーに通すと若干低い。

水平に腕を広げる話と同じだ。

音階によって、喉が正確に覚えている音もあれば、少し低めに覚えている音もあった。

低いのに、感覚的には合ってると思ってるんだ。

これは発見だった。

ボイトレ等を受けている人には、今更やってんの?と思われるかもしれないので、恥ずかしい告白でもあるのだが。

友人のギタリストも、ステージで最大のパフォーマンスを出すための講義みたいなものを受けに行って、緊張している時は、首の位置が普段冷静な時と違っている、と言われたと話していた。

それで、手の動きも上手くいかなくなっちゃうわけだね。

自分の体の動きをちゃんと把握するって大事だなと思う。


ところが音楽はスポーツではないので、必ずしも音程やリズムが正確ならいいわけではない。

ここのところにこだわるあまり、本来身に付けるべき「何か」を置いてきちゃうようだったら、最初からそんな練習はしないほうがいいとも思うのだ。


ケエロケエロと合唱する、カエルの歌は気持ちいいなと思う。

別に、音階もメトロノームも、アンサンブルのメソッドもありはしないんだけどねー。

うまく言えないが、素朴で豪華な音楽である。

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