カンボジア演奏旅行記 その2
濃厚な一泊をしたロリオス村を後に、クラチェ中心街に戻り、院内コンサートを行いました。これはある意味、今回のメインの演奏でもあります。
佐伯さんの考えたテーマは「日本の音楽を聴いて健康に」である。
ロリオス村の若干の不消化を立て直す意味で少し考えた。
病院に娯楽が少ないので、FIDRが初めて院内にTVを設置したとき、患者さんの顔がぱっと明るくなり、その時のみんな顔が忘れられないと、佐伯さんは言っていた。
「娯楽が少ない。」という言葉には少々の誤解が発生しそうだ。
皆さんYOUTUBEやSNSなどは僕たち以上に使いこなしていらっしゃるし、カラオケも大好き。スポーツも好き。結婚式などでは生バンドが入って、夜中まで踊る人たちである。
院内において、傷病の回復という目的以外にレクリエーションがなく、病床にカーテンや老若男女の区別もないため、家族だけで安楽に過ごす時間なども少ないだろう。
雑踏やソーシャルメディアの中に少ないものは、生身の人間が直接語りかけるような、有機的な音・形、そして柔らかな癒しのための「娯楽」だ。
だから今回の音楽のテーマは、集団の中で「個」になれること。
そして、やさしい手のような音色、と思う。
あれ…?なんだ、普段から自分がやっていることじゃないか。
ロリオス村でのちょっとした課題をクリアできたのか、なにか皆さんの欲しいものと、僕が行いたいことが少し合致したような気がした。
クメール語には、音楽に対する専用の褒め言葉があるそうだ。
スペルはわからないが、「音が良い」という意味のその言葉を何人もの人が言ってくれたらしい。
涙を流しながら聴いてくださった方もいた。
ほんとうに音楽家冥利に尽きると思う。
ところで、「アラピヤ」という曲がある。
カンボジアで、子供から大人まで知らない人はいない。
「みんな集まって楽しく歌って踊ろうよ!」というような内容のフォークソング調の曲で、必ず大合唱になるような歌だ。
この曲を覚えて、ライブの最後に歌わせてもらった。
いつ頃できた歌なのか定かではないが、音楽などとてもできなかった時代を乗り越えて、「みんなで踊ろうよ」という歌詞が、きっと僕たちが聞くよりずっと意味のある曲なんだろうと思う。
帰ってきた今でも、ずっと頭の片隅に流れている。
AR RAB PIYA
マイクスタンドが1本しかなかったので、これぞカンボジアンスタイル↑
音楽(その他いろいろ)を届ける、ということについて。
支援団体の方々との話。
「コンサートを開いてあげたいんです。」等々の提案はたくさん来るそうだ。
途上国の貧しい町に行き、先進国の一部の人達が楽しむ種類の音楽を聴いていただくこと。もちろん個個の交流としては素晴らしいことだと思う。
でも、ほんとうに現地で何が足りなくて、また逆に何に関して豊かなのか、興味を持ち、知って、その先の行動をしてくれる人はとても少ないそうだ。
現地でも古くて使わないような医療器具を送ってきたり、「使い終わったランドセルを沢山贈りたいのですが」と提案され、いやそれは使わないので…とお断りすると、もう集めちゃったのにこれどうするんですか?と苦情を言われた、という話もあった。
優しさ自体は素敵だけれど、まず自分が知るってことを忘れてイメージだけでものを見た結果なんだなあ。
僕が関わっている障がい福祉など、身近なことにおいても同じことが言える。
とても勉強になりました。
佐伯さんと打ち合わせした今回のコンサートでの大きな目的は、現地の医療者の方々に、院内でのレクリエーションの有効性について考えていただくこと、そして、そこにいる人達だけで発案できる持続可能な規模で行うこと、だった。
院長さんも、これからもやりたいという趣旨の発言をしてくれていたので、大成功と言えるのではないか。
地元のつながりでそういった活動が広まっていくよう祈っております。
たまーに僕もお邪魔させてね。
つづく
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